疲れが取れない状態が続いているなら、気合いで対応しようとする前に、確かめられることが3つあります。疲れの度合いを測ること、何に疲れているかを言葉にすること、そして今ある時間でできることを一つ選ぶことです。一人で抱え込まずに使える相談先があり、受診を考える目安もあります。
この記事の内容は、ナレーション付きの動画(約4分)でも解説しています。
疲れの度合いを、まず測る
厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」に、無料の働く人の疲労蓄積度セルフチェック2023(働く人用)(外部サイト・新しいタブで開きます)があります。全27問、かかる時間はおよそ5分。厚生労働省の「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト」2023年改正版に基づくツールです。
このチェックの作りには特徴があります。イライラする、不安だ、といった最近1か月の自覚症状14問に加えて、残業の長さや休日の取れかたなど、勤務の状況13問をあわせて聞くことです。
つまり、どう感じているかだけでなく、どれだけの負荷がかかっているかという客観的な事実からも疲れを測ります。「このくらいは普通」と感じていた働き方が、負荷としてはどれくらいなのかが見えてきます。
結果は0〜7点で出ます。点数と判定の対応は次のとおりです。
| 点数 | 疲労蓄積度 |
|---|---|
| 0〜1 | 低いと考えられる |
| 2〜3 | やや高いと考えられる |
| 4〜5 | 高いと考えられる |
| 6〜7 | 非常に高いと考えられる |
2点以上だったなら、厚生労働省の資料は、疲労が蓄積している可能性があるとして、勤務の状況の見直しを勧めています。ご自身の裁量で変えられる項目は変え、変えられない項目は上司や産業医に相談する、という分け方です。時間外・休日労働が月45時間を超えているなら、労働時間そのものを短くすることを検討するよう書かれています。
何に疲れているかを、言葉にする
厚生労働省の令和7年労働安全衛生調査によると、仕事や職業生活で強いストレスになっていると感じる事柄がある働く人は67.5%でした。強いストレスがあると答えた人を100としたとき、内容として最も多いのは仕事の量と仕事の失敗や責任の発生などで、どちらも39.5%です。次いで対人関係(セクハラ・パワハラを含む)が32.9%、仕事の質が30.7%と続きます。
なお、この調査は令和6年に設問の形式が変わったため、令和5年以前の数値とは単純に比べられません。
数字が示すとおり、仕事のストレスはいくつかの種類に分かれます。疲れがどれに近いかを一つ選んで言葉にしてみると、漠然とした「疲れた」が、「量が多すぎる」「責任が重い」といった具体的な形に変わります。紙やメモアプリに一行書くだけで構いません。
国の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」も、セルフケアはまず、働く人自身がストレスに気づき、自分の状態を正しくつかめるようになることから始まる、としています。言葉にすることは、この気づきのいちばん簡単な方法です。一行の書き出しに慣れてきたら、感情を書き出す「放電」と前向きな一歩を書く「充電」の2段階に広げた書く瞑想——5分でできる、感情の放電と前向きな充電も試せます。
今ある時間で、できることを一つ選ぶ
疲れているところに新しい習慣を足せば、その分負担も増えます。時間を新しくつくるのではなく、いつもの時間の使いかたを少し変えるやり方から選ぶほうが現実的です。
基本になるのは睡眠です。厚生労働省の健康情報サイト、e-ヘルスネットは、快眠に役立つ生活習慣として運動、入浴、光を浴びることの3つを挙げています。どれも、ほどよい強さで、続けて、ちょうどよい時間帯に行うのがよいとされています。布団に入っても悩み事が頭から離れず眠れないときの対処は、疲れているのに眠れないとき——悩み事を寝床に持ち込まない方法でまとめています。
たとえば、帰り道にひと駅ぶん歩く。寝る1〜2時間前に湯船につかる。朝、カーテンを開けて日の光を浴びる。どれも特別な時間はほとんど要りません。一つ注意があり、寝る直前に運動すると、かえって目が冴えてしまうため、体を動かすのは寝る2〜4時間前までがよいとされています。
そして、全部やる必要はありません。先ほどの指針がセルフケアとして求めているのは、ストレスに対処する知識と方法を身につけて、実際にやってみることであって、完璧にこなすことではありません。一つ選んで、できた日を数える。そのくらいの気持ちで始めて構いません。具体的なやりかたの例は、note の記事毎日疲れが取れないあなたへ。5分でできるセルフケア術4選(外部サイト・新しいタブで開きます)にもあります。
一人で抱え込まない
相談することも、セルフケアの一部です。先ほどの指針は、働く人が自分から相談しやすい環境を整えることを事業者に求めています。相談は、制度として最初から想定されている行動です。勤め先に産業医や保健師、社内の相談窓口があれば、そこも使えます。
同じ令和7年の調査では、ストレスを相談できる相手がいる働く人は94.8%に上ります。相手として多いのは家族や友人、次いで上司です。一方で、相談できる相手がいる人のうち、実際に相談したことがある人は71.2%です。相手はいるのに話していない人が、そのうちのおよそ3割いる計算になります。相手がいても言い出せなくなる背景は、男性が「助けて」と言えない理由と、それでも相談するにはで扱っています。
ストレスを相談できる相手がいる人と、実際に相談した人の割合
働く人全体
ストレスを相談できる相手がいる 94.8%
そのうち実際に相談したことがある 71.2%
(厚生労働省「令和7年労働安全衛生調査(実態調査)」)
身近な人に話しにくいときは、国の窓口があります。厚生労働省の「こころの耳」では、電話・SNS・メールで相談を受け付けています。働く本人だけでなく、家族も相談できます。受付時間や利用のしかたは、働く人の「こころの耳電話相談」(外部サイト・新しいタブで開きます)で確認してください。
不調が続くときは、受診も選択肢に
国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」によると、眠れない、食欲がない、疲れやすいといった体の不調は、うつ病のサインとして現れることがあります。体の病気や治療薬が原因で、うつ状態が生じることもあります。
気分の落ち込みや、何をしても楽しめない状態が続き、日常の生活に支障が出ているなら、自己判断で様子を見続けず、医療機関やかかりつけの医師に相談してください。我慢を重ねるより先に、専門の窓口や医療機関につながることを選択肢に入れてください。
先ほどのセルフチェックが示すのは疲労の蓄積であって、うつ病かどうかではありません。点数が高かった場合はまず勤務の状況を見直し、こちらは気分や生活への支障が続くかどうかで考えます。
疲れが取れない状態が続くのは、怠けでも気のせいでもありません。測って、言葉にして、できることを一つ選ぶ。そして、一人で抱え込まない。これが、疲れに対処するときの基本の順番です。
※ 出典: 厚生労働省「令和7(2025)年 労働安全衛生調査(実態調査)の概況」、2026年9月10日閲覧。厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(健康保持増進のための指針公示第3号)、2006年、2026年8月6日閲覧。厚生労働省「こころの耳」働く人の疲労蓄積度セルフチェック2023(働く人用)、2026年8月6日閲覧。厚生労働省「こころの耳電話相談」、2026年8月6日閲覧。厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」、2026年8月6日閲覧。国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト」うつ病、2026年8月6日閲覧。心の健康の保持増進のための指針は平成27年(2015年)に改正されている。疲労蓄積度セルフチェックは、厚生労働省「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト(2023年改正版)」に基づく。
※ 江原 和比己(外部サイト・新しいタブで開きます)(えはらかずひこ)—— 産業カウンセラー(日本産業カウンセラー協会認定)/日本ブリーフサイコセラピー学会 正会員/かずな総合研究所 代表。IT領域で約25年のキャリアを経て産業カウンセラーに転身。100kmウルトラマラソン完走者。